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大好きなのは・・・        ロバート・カーライルさん♪  


by koujitu3
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『亀も空を飛ぶ』

『亀も空を飛ぶ』というイラクの映画を観ました。
観たい映画のひとつではあったのですが、戦争を扱った映画なのでしんどいと嫌だな、という思いもあり少々どうしようか迷っていました。が、えいっ、と思い切って観てきました。
観るのを止めなくてよかった。
観るべき映画でした。
確かに、明るい映画ではありません。オープニングから、既に結末を描いているし、次々解ってくる事のどれもが辛いことばかり。
でも、子供達の生き様に教えられるというか、決して絶望的な気持ちにはならないのです。むしろ、どんな状況でも生きていかなくては、そして、どんな状況下でも人は生きている、だからこそ、そんな状況を作った人間達に、考えよ、と見せてくれているような気がしました。
私には、『エンド・オブ・オール・ウォーズ』より、この映画の方が辛いのに受け入れられたのです。子供達の見ている世界だったからでしょうか。
主人公の女の子の思いが同じ女としてわかるからでしょうか。

この映画を観終えて、一人で歩いていた時の私は、たぶん唇をかみしめて、人にはあまり見せたくない顔をしていた事だろうと思います。
やはり、理由の如何によらず、戦争をしてはいけない。
子供達に、あんな日常が平気な人生を過ごさせてはいけません。

映画を今からご覧になろうと思われる方はお読みにならないで下さい。内容にかなり触れた事を以下にかきます。



映画のオープニングは、少女が下は岩場の断崖から身を投げるシーンです。
(カメラが少女の目線になるので、空をとらえて題字等のシーンに移行します)

私は予備知識なしで観ました。
始めは、話の展開が解らなくて、子供達をとりしきる男の子が、きっと日本の戦後にもこういうこどもがいたことだろう、と頼もしく思えて、のんびりと観ていました。
でもね、地中に埋められた地雷を探し出して、掘り出して、それを売ってお金を得るのが子供の仕事なのです。私はそんな事、考えてもみませんでした。
その男の子と村の大人とのやりとりなど、思わず頬の緩むシーンもあります。その度に思わされたのが、子供の方がたくましい、しっかりしている、でした。
冒頭の少女は、村にひなんしている難民の一人でした。その兄は両腕がないのです。ほんの数センチ肩の先に残っているだけ。何も語られなかったと思うのですが、多分戦闘に巻き込まれてのことだと思います。もしくは地雷?
その兄は、手の代わりに口と足で何もかもこなせます。地雷を掘り出すと、それを上手く処理することまでやってしまいます。
その兄妹が常におんぶして連れている幼児、村の子供達は弟だと思っていたし、映画を見ている者もそう思っていたはずです。けれど、後で二人の会話からわかるのです。この幼児は、二人の親達を殺したフセインの兵士達に乱暴されて出来た少女の子供でした。しかも、この幼児は目が不自由ときているのです。
兄は、この子をとても可愛がっているのですが、少女の方はかなり厄介者扱いで、仕方なく面倒を見ている様子でした。
後半になって、少女は兄に、この幼児を置いて村を出ようと持ちかけます。この村ならば、きっとこの子をなんとかしてくれるから、と。
兄は絶対にうんといわないのですが、その時少女がいうのです。今はいい、でもこの子が物心付いた時、なんていうの?
ここに書いていないことの方が多いのですが、いろいろなことあり、結局、少女はこの子の足にロープを結び、その先に大きな石を結わえ、池に放り込むのです。そして自分は冒頭のシーンの行為をすることになるのです。

ここに書いたことだけでは辛くて観ていられませんが、村の子供達、殊に彼らをとりしきるボス的男の子と、その弟、慕っている手下の子供などが、なんとも人らしいので、辛くないのです。
いろいろなことを、実に淡々と描いていて、何も作り手の考えを押し付けないところが、この映画の良さであり、凄さだという気がしました。
by koujitu3 | 2005-12-14 21:10 | 映画 か